時計塔の見聞録・破滅の巻
種別
コレクション
グレード
B級コレクション
説明
ヨリンは惨めな小物だった。心無い嘲笑と数えきれないほどの屈辱によって無口で陰険な性格となった彼は、現状を変えるために強大な力を求めた。建設作業員たちが時計塔でユミルの心臓の欠片を掘り当てた時、その奇妙な欠片は桁外れの強さを持つモンスター達をおびき寄せただけでなく、ヨリンの心に無限の希望をもたらした。作業員たちがすっかりヨリンがモンスターに殺されたのだろうと可哀想がっていた時、息を吹き返した彼は入念に計画を立て、ハイディング仮面 をかぶって暗黒の深淵へと足を踏み入れ ていった。深淵には激しく吠え立てる悪魔や、ヨリンを美味そうに眺める亡者の 魂がいたが、彼は一切気にせずに進み、そして明朗な口調でこう言った。「亡者のヴァルキリーよ、私はあなたの忠実なるしもべとなります。ためらいを感じているのでしたら、私が進むべき方向を示して差し上げましょう。」ヨリンは抜け目ないヒメルメズを利用し、闇夜に亡者の大軍が出撃していく中、仮面を外して静かに果実が実るのを待った。利己的なオルドリッジと貪欲なヒメルメズは目先の欲望にくらみ、隠れた敵を見逃していた。潜んでいたヨリンは簡単に戦いのただ中に紛れ込み、混乱の中、誰にも気づかれずにユミルの心臓の欠片を持ち去った。ヒメルメズは怒りに震えながら手ぶらで引き返すことになり、オルドリッジは果てしない自責の念に駆られた。完璧な計画だった。ヨリンはその忍耐強さと悪どさによって、ついに念願を果たしたのだ。だが残念ながら、ヨリンは最後の勝者にはなれなかった。夢にまで見た不思議な欠片を目の前にした時、ヨリンは心に平穏は訪れなかった。むしろ強大な力によってゆっくりともたらされる異変が彼を苦しめた。 彼は心の中で自分自身に問いかけた。もしここで誰からも嫌われる化物になってしまったら、これまでの努力は何だったんだ?重苦しい圧力と心理的な落差に耐えられなくなった彼は、強大な力を得るためなら冷酷になり、すべてを破壊しても構わないと考えるに至った。みなぎる力が指先からほとばしった瞬間、彼は心の抑圧をすべて解き放った。暴走する巨大な力は時計塔の隅々まで巻き込み、すべてのさまよう命に終止符を打った。これは悲しい物語。あの奇妙な欠片が作業員たちに発見された時、彼らの運命は決まっていたのだ。